2017/03/26

恋の季節


週の初めには春分の日があって、本当に春らしい陽気に包まれた。久し振りに遠出をして、カタクリの里で咲き始めたばかりのカタクリを撮り、箱根の湿性花園を訪ねて水芭蕉を撮った。咲き始めの春の花たちの姿をカメラに収めながら、すっかり春らしくなった風景にワクワクするような気分を味わっていたところ、週の半ばには、東京でのソメイヨシノの開花までアナウンスされた。「今週末は早咲きの桜撮りだ!」と勝手にひとり盛り上がっていたのだが、週の後半、一転して寒さが戻ってきて、まるで真冬のような北風に冷たい雨。ソメイヨシノの開花も足踏みをして、今晩から明日にかけては、箱根のあたりでも雪の予想となっているから、この時期の天気は本当に分からない。

撮影に出る機会が増えてきたこともあって、今週は、このブログに載せたい写真がずいぶんたくさんあった。玉の井の散策中に撮った路地の奥に咲く白木蓮や、春の訪れを告げる鶯神楽、もちろん撮影の主役であった片栗や水芭蕉を撮ったモノの中にも、それなりにお気に入りの写真がある。どれか一枚を選ぶという作業がとても難しかったのだが、それらの多くはTwitterの方に「大量投下」をしたので、そちらでご覧いただくことにして、今回は、恋の季節を迎えて活動が活発になってきた、ご近所の公園のカワセミ君の写真を載せることにした。

ご存知かどうか、繁殖期以外のカワセミ君には強い縄張り意識があって、普段は全くの単独行動をしている。夫婦であっても親子であっても、縄張りに入り込んできた相手は激しく威嚇して追い出してしまうという。それが、この時期だけは、つがいで一緒にいる姿や、オスが獲った獲物をメスにプレゼントするといった、見ているこちらの頰が緩んでしまうような、愛らしい行動が見られることが知られている。鳥撮りをする人にとっても格好の被写体となるらしく、平日だというのに、撮影スポットの公園は、大砲を抱えた人たちで一杯になっており、「昨日は(メスに)獲物を渡すところが見られたんだよ」などという話が、あちこちで飛び交っていた。

ボクもそうした行動を撮りたくないワケではないが、今のカワセミ撮影の課題は、大砲レンズや三脚などの機材の扱いに十分に慣れて、飛び込みやホバリングといった基本的な動きを理解・予測して、きっちりピントの合った写真を撮れるようになることだと考えている。使用しているビデオ雲台や三脚は、今のカメラとレンズを扱うにはやや力不足で、飛び込みを待つ間の長い時間を、レンズを支える左腕がプルプルふるえるのをガマンすることが出来れば、飛び物に関しては、手持ちの方が歩止まりは良いくらいなのだが、よりしっかりした写真を撮るためには、何よりも練習が必要と思って、ボクには珍しく努力を重ねている次第だ。そのうち、ハッとするような写真をお目にかけることが出来ればと思っている。

2017/03/19

晴れた土曜日には自転車に乗って


先日、思うところがあって、学生の頃から乗り続けてきたバイクを、思い切って手放した。その後の禁断症状というワケでもないのだろうが、日に日に二輪のたぐいが欲しくなって、ついに新しく自転車を購入しようと決心した。これまで使ってきたオレンンジ色の折り畳み自転車は、オシャレで可愛らしくて、とても気に入っているのだけど、ぶっちゃけ自分の体格には合わず、「まるで自転車をいじめているみたいだ」と、家人には笑われてきた。家人はボクのオレンジの自転車を狙っているフシがあるので、その発言は、少し割り引いて考えなくてはならないが、正直、自分でもやっぱりちょっと「いじめてる」感じがしなくもない。

「思い立ったらすぐ行動」というわけで、あれこれ調べ始めた。タイヤが太く、見た目、ガッチリとして安心感があるという理由から、マウンテンバイクを中心に探してみると、自分の好みにぴったりで良さそうなモノが見つかった。初めは黒いボディカラーが良いかなと思っていたが、ショップで実車を目の前にして、そこに展示してあった空色の自転車に決めた。ショップの方が言うには「よくあるパターン」なのだそうだ。予約をすると、納車は3月末から4月初めになるという話だったが、予定よりもずいぶん早くに入荷の連絡をいただいて、先日、さっそくショップまで受け取りに出かけてきた。

その日はよく晴れていたこともあって、購入初日に、ショップから職場まで、職場から自宅までの合計30数kmの道のりを走ってみた。午後から学習会の講師を引き受けており、納車の日程を先延ばしすることも考えたのだが、「時間的に厳しいなら、買ったばかりの自転車で移動してしまえ」と、まあボクらしく、あと先考えずに行動。結果として、勉強会の時間には間に合い、講師もつつがなく終えることができたものの、普段、運動不足の身体に長距離の自転車はなかなか厳しく、さっそく筋肉痛に悩まされている。

自宅から職場までは、Google先生によれば、およそ12kmほど。普通に走れば一時間はかからないくらいの距離である。混雑している国道が中心なので、走って気持ちの良い道とは言い難いが、大きな川を渡る時など、バイクやクルマでは、あっという間に流れ去ってしまう風景が、ゆっくり走る自転車からは、とても良く見える。写真を撮るには少々速過ぎるのだが、それでも、季節の移り変わりを肌で感じ、風景を楽しみながら走ることはステキな体験だ。晴れた土曜日の通勤は、この空色の自転車に乗って…などと空想しては、少しワクワクしている自分を見つけて、ちょっと可笑しくなった。

2017/03/12

路地裏の自然


細く曲がりくねった向島の路地に一歩足を踏み入れると、玄関や窓辺に所狭しと並べられた鉢植えの植物たちの姿が目に飛び込んでくる。いかにも鉢植えに似合いそうな花を咲かせる一年草だけではなく、紫陽花や木槿といった、成長するとかなり大きくなる花木が、ボロボロになったトロ箱に植えられている。「こんなところに!」と、驚かされることも多い。「ベランダ園芸」に対して「路地裏園芸」と呼んだ都市研究者がいたが、確かに名前をつけたくなるほど際立った存在感だ。

人の気配のする家ーそれは夕飯の焼き魚のにおいや、聞こえてくる野球放送の音だったりするのだがーの前では、一見、植物たちは行儀良く鉢の中におさまっている。しかし、主人を失った家の前にある植物たちは、次第に鉢の中ではおさまりがつかなくなってゆく。植物の「穏やかさ」「癒し」といったイメージとは裏腹に、南国の深い森に生きる植物たちのような、たけだけしい本性をあらわにしてゆく。窓に壁に柱にと、幾重にも取りついて(憑いて)古びた家を絞め殺す…そんな風に見えてくるから恐ろしい。

以前から、こうした植物たちの姿を眺めながら、都市としての機能を失ってしまったトウキョウの姿を想像することがあった。大災害でライフラインが断たれ、多くの人がこの地を離れてしまうといった極端な設定でも、あるいは、人が集まらなくなった商店街のように、トウキョウ全体がゆっくりと枯死して行くといった緩やかな設定でも良い。否応なくそこに暮らす人間たちは、野放途に広がった植物の陰でひっそり生きている…よく、そうしたイメージを思い浮かべていた。しかし、そんな他愛のない空想は、2017年の今日、すでにフクシマとして現実化してしまっている。

東日本大震災から6年が過ぎた。その後も、日本各地で予測できない自然災害が次々と起こり続けていて、その度に、「自然」を前にした人間の小ささ、弱さを自覚させられる。おそらくは、路地裏に置かれた植物たちは、都市にぱっくりと口を開けた亀裂なのだ。その亀裂は、人間が制御することのできない「自然」へとつながっている。路地裏にひっそりとあるこうした「自然」が、都市を絞め殺す恐ろしい姿となってあらわれたのちに、ナウシカに描かれた腐海のように、汚れてしまったこの大地を、ゆっくりと浄化してくれることを願ってやまない。

2017/03/05

啓蟄


3月に入って、もうホントにびっくりするくらい、すっかり春めいてきた。何よりも日差しがあたたかみを帯びた色に変わって、北風さえ吹いていなければ、ひだまりの中ではぽかぽかとしてくる。身体から力が抜けて、こころがやわらかくなっていくのが実感できる。もちろん、来週に入ると冬に逆戻りという天気予報だから、まだまだ春本番というわけにも行かず、しばらくは、春と冬とを行ったり来たりするのだろう。

こんなに良い天気だと言うのに、土曜、日曜と自室にこもったままで過ごしている。年明けから、慣れない学会発表やら講演やらが立て続けにあって、それらに加えて、2月の初めからは、私ごとでもバタバタとしていた。昨年、新たに始めた仕事も間もなく一年が過ぎようとしていて、順調に忙しくなって来ている一方、新たな課題や問題も出てきている。それなりに頭を抱えてしまうような話もある中、多忙の合間を縫うようにやや無理をして、撮影に出かける時間を作って来た。

そうした無理の積み重ねからか、3月に入ってひどく体調を崩してしまった。週の後半から、激しい頭痛と肩こり、吐気などの、おそらくはストレス性の身体症状が次々とあらわれてしまい、今週末は少し大人しく過ごすことにした。もともと春先は、気温の上下に身体がついて行かず、花粉症の症状にも悩まされて、体調を崩しやすい時期だ。例年は、よくよく注意をして睡眠をとるようにと心がけていたのだが、今年は忙しさのあまり、そうした対策がやや疎かになっていた。

そんなワケで、今日は自室にこもって、普段やらないような書類の整理や、身の回りの片付けなどをしながら、のんびりと過ごす予定だ。来週からは、ふたたび忙しい仕事に取り組まなければならないし、まったく馬鹿げた、しかし見過ごすことのできない政治問題の行方も、しっかり見届けなくてはならない。ゆっくりできるのは、今日いっぱいくらいだろうか。

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